「家では自分で着替えないのに、園ではできると聞いた」。そんな場面を想像すると、うれしさと一緒に、「どうして家では?」という戸惑いも浮かびそうです。反対に、家ではよく話す子が、園では静かに過ごしていると聞くこともあるでしょう。今回は、家庭と園の伝え合いを考えます。以下は関わり方を考えるための例で、実際の園児や家庭の出来事ではありません。
保育所保育指針の第4章では、保護者の気持ちと自己決定を尊重すること、日々の子どもの様子を伝え合って相互理解を図ることが示されています。※ これは保育の方針を示す資料であり、特定の声掛けの効果を証明する研究ではありません。
ここから私が考えたいのは、「どちらの姿が本当か」を決める前に、それぞれの場面を持ち寄ることです。同じ「着替えた」という話でも、服を選ぶところから一人でしたのか、袖を通すところを手伝ってもらったのかで、受け止めは変わります。「できる・できない」の二つだけでは、途中にあった工夫や支えが見えにくくなります。
例えば園へ尋ねるなら、「どんな時に、どこまで自分でしていますか」「その時、大人はどう手伝っていますか」と聞いてみる。家庭からは、「夕方、お風呂の前は袖を通す手伝いを求めます」のように、一つの場面を伝える方法があります。時間、していたこと、大人の関わり。この三つのうち、話しやすいものだけでも十分です。
園の側も、家庭の困り事を「こちらではできますよ」で閉じないことが大切だと思います。「園では、服を広げて置くと腕を通しています」のように、環境や援助も含めて伝えれば、家庭でも園でも、無理なくできる関わりを一緒に考える手掛かりになります。ただし、園と同じやり方を家でも必ず行う必要はありません。家族の時間や暮らしに合うかを、確かめながら考えたいところです。
また、違う姿があるというだけで、「甘えている」「園で我慢している」と理由を決めつけないようにしたいと思います。子どもの気持ちは、説明のつく言葉を一つ当てはめれば分かるものではないからです。困っていることが続く時は、その困り事も伝え、どんな支えが必要かを園と相談していきたいと思います。
この伝え合いのために、新たに詳しい記録をつけようと気負わなくても大丈夫です。まずは気になる場面を一つ。「こちらではこうでした。そちらではどうですか」。家庭にも園にも、それぞれが見ている大切な姿があります。その違いを、互いを評価する材料ではなく、子どもを知る手掛かりとして持ち寄っていきたいと思います。
※参考:厚生労働省『保育所保育指針』(平成29年告示)、第4章1(1)ア、2(1)ア。

