この度、前坊守である鈴木章子の著作『還るところはみなひとつ~癌の身を生きる~』第23刷が東本願寺出版より再版されることとなりました。
1989年11月25日に第1刷が出版されてから、長い月日を経てもなお、たくさんの人に読まれ、誰かの心に鈴木章子の言葉が届いていることを、大変うれしく思います。

癌に侵され、死と向かいあった時、苦悶しながらも、どのようにして生きるのか。
自身の病状が変容していく様子や、仏の教えにうなずかされてゆく事実を
彼女の自身の言葉として、現実に起きている真実として書かれています。
私たちは、「死」というものを、何か特別視してはいないでしょうか。
考えてみれば、今、私たちが生きている時点で、その「生」がやがて終わることは
誰しもがどこかで理解していることでしょう。
そして、私たちが生まれることを私たち自身で決めて生まれてきたわけではないように
その命の「最期の時」を自分で決めることは誰にもできないことも知っているのです。
しかし、私たちは、日頃から仕事や生活の悩みごとを考えたり、目先の楽しさや安定を追い求めることに忙殺されそのような当たり前の事実から、目を背けさせられて、生きているように思います。
「いつか死ぬ」と、まだ「死」が遠くにある根拠などない以上、
私たちは、今、生きているい「命」とどのように向き合っていくのか、
「死」というものに抱く嫌悪感、恐怖感とどう対峙していくのか考えてみる必要があるのではないでしょうか。
そのような人生における大切な題を、共に考えてゆく友として、この本がより多くの人に読まれること願っています。
合掌

