絵本を開いたのに、子どもは同じページばかり見ている。続きを読もうとすると、前の絵へ戻りたがる。そんな場面を想像すると、大人には「最後まで読んであげたい」という気持ちも出てきそうです。今日は、読み終えることと、一緒に楽しむことの間を考えてみます。以下は関わり方を考えるための仮の例で、実際の園児の出来事ではありません。
保育所保育指針では、1歳以上3歳未満児の「言葉」のねらいとして、絵本や物語に親しみ、言葉のやり取りを通して身近な人と気持ちを通わせることが示されています。また、絵本や紙芝居を楽しみ、簡単な言葉を繰り返したり、まねたりして遊ぶことも挙げられています。※ 読んだ冊数だけでは捉えきれない時間が、そこにはあるのだと思います。
例えば、絵の隅に描かれた犬を指さしたとします。その時、すぐ「何匹いる?」と問題を出す代わりに、「犬がいたね」と応じて、少し待ってみる。子どもがまた指さしたら、同じ場所を一緒に見る。言葉で答えなくても、目線や身ぶりにも、こちらから応じることができます。これは一つの提案で、特定の発達効果が確かめられた手順という意味ではありません。
もちろん、問い掛けがいけないわけではありません。数えることを楽しんでいるなら、一緒に数える時間もあります。ただ、大人の質問に正しく答えることが続くと、何に心が動いているのかを見落とすかもしれません。「何を教えるか」を考える前に、「今、どこを見ているのかな」と目を向ける余地を残したいと思います。
途中で本を閉じたり、別の遊びに移ったりする日もあるでしょう。その一場面だけで、集中力がない、絵本が苦手、と決めなくてもよいと思います。眠さや周囲の音、本の内容など、状況を見直す手掛かりはいくつもあります。無理に引き戻さず、今はおしまいにする選択も含めて考えます。
家庭では、毎回きちんと読み聞かせをしなければ、と負担を増やす必要はありません。一ページを一緒に眺めて終わる日があってもよい。園でも、皆で聞く時間とは別に、一人の興味に合わせて本を開く機会をどうつくれるか考えたいところです。集団の活動と一対一の時間では、関わり方も同じにはなりません。
最後のページまで進めたかどうかに目が向くと、途中で交わした小さなやり取りが隠れてしまいます。本の続きを急ぐ前に、同じ絵を見ている今の時間にも目を向けたい。子どものペースに触れながら、大人の側の「ここまで」を少し緩めて考えたいと思います。
※参考:厚生労働省『保育所保育指針』(平成29年告示)、第2章2(2)エ「言葉」(ア)③、(イ)④。
